岐阜薬科大学

岐阜薬科大学薬理学研究室 の 呂佳俊(M1)、岐阜薬科大学?岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科の檜井栄一教授 らの研究グループは 、 株式会社秋田屋本店、 森川健康堂株式会社、富山県立大学との共同研究により、 ロイヤルゼリーが"膝の関節を健康に保つ"ことを 発見しました。

変形性膝関節症は、加齢、肥満や過度の負荷などによって、膝の関節軟骨がすり減り、炎症や変形を生じて痛みや腫れなどが起こる運動器の疾患です。症状が進行すると、歩行や正座、階段の昇り降りなどの日常のなにげない動作も困難になってきます。

変形性膝関節症は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)(※1)の代表的な疾患であり、高齢化が急速に進む本邦の健康寿命(※2)延伸を脅かしています。現在は、変形性膝関節症に対して、炎症を抑えて痛みや腫れを軽減するような対症療法が主流であり、効果的な治療?予防法の開発が望まれています。

ロイヤルゼリーは、働きバチの分泌物で、たくさんの栄養素を含んでいます。女王バチになるために必須のロイヤルゼリーですが、最近では、高血圧、糖尿病や骨粗しょう症などの生活習慣病を予防する効果をもつなど、様々な機能をもっていることが明らかになっています。しかし、ロイヤルゼリーの変形性膝関節症に対する効果はこれまで明らかになっていませんでした。

本研究では、変形性膝関節症モデルマウスにロイヤルゼリーを毎日経口摂取させると、膝関節軟骨の変性が抑制されることを発見し、ロイヤルゼリーが変形性膝関節症を予防する効果を持っていることを明らかにしました。

本研究成果は、2023年2月1日に日本薬学会学術誌『BiologicalandPharmaceutical Bulletin』に掲載されました。

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本研究成果のポイント

  • 変形性膝関節症は、高齢者の健康寿命の延伸を脅かすロコモティブシンドローム(ロコモ)の代表的な疾患です。
  • ロイヤルゼリーを毎日摂取すると、軟骨の変性が抑制され、変形性膝関節症の症状が著明に緩和されることが分かりました。
  • ロイヤルゼリーは、軟骨細胞の炎症性サイトカインや軟骨基質分解酵素の発現を抑制することが分かりました。
  • 以上の成果により、ロイヤルゼリーの日常的な摂取が、変形性膝関節症を予防し、高齢者の健康寿命の延伸に繋がることが期待されます。

研究成果の概要

研究グループはまず、外科的な処置によって作製した変形性膝関節症モデルマウス(Iezakietal.,J.Pathol.2009)に、ロイヤルゼリーを与えて、膝の関節軟骨の変性に対する予防効果を検討しました。その結果、モデルマウスにロイヤルゼリーを毎日、経口摂取させたところ、膝の関節軟骨の変性が著明に抑制されることがわかりました(図1)。

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次に、"なぜロイヤルゼリーが変形性膝関節症の症状を緩和するのか?"を明らかにするために、軟骨細胞を用いて解析しました。その結果、ロイヤルゼリーを添加した細胞では、炎症性サイトカインの発現や軟骨基質分解酵素の発現が著明に抑制されることが明らかになりました。

日本の変形性膝関節症の推定患者数は、潜在的な数も含めると3,000万人にものぼるとの報告もあり、多くの高齢者が膝に悩みを抱えています。本研究成果より、ロイヤルゼリーは、軟骨細胞の炎症性サイトカインの発現や軟骨組織の変性を抑えることで、"膝関節を健康に保つ"効果をもっていることが明らかになりました。ロイヤルゼリーの日常的な摂取が、ロコモティブシンドロームを防ぎ、多くの高齢者の健康寿命の延伸に繋がることが期待されます。

用語解説

※1 ロコモティブシンドローム(ロコモ)
関節や骨などの運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態

※2 健康寿命
健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間

論文情報

  • 雑誌名:Biological and Pharmaceutical Bulletin
  • 論文名:Amelioration of Osteoarthritis Development by Daily Oral Supplementation of Royal
    Jelly(ロイヤルゼリーの日常的な摂取で変形性膝関節症の症状が緩和する)
  • 著者:呂佳俊、久保拓也、岩橋咲幸、深澤和也、堀江哲寛、永松剛、池野久美子、中村源
    次郎、鎌倉昌樹、檜井栄一
  • DOI番号10.1248/bpb.b22-00654

研究室HP

https://sites.google.com/gifu-pu.ac.jp/labo-yakuri